2014年1月30日木曜日

2014-01-30

舵輪に込めた松下氏の思いと、先行きが不透明な状況下での経営者による舵取りの重要性。

(40字)

春秋
2014/1/30付
 大阪府門真市にはパナソニックの本社や工場とともに、同社の歩みを紹介する松下幸之助歴史館がある。1933年、大阪市内から門真に移転して新築した本店を再現した建物だ。屋上に取り付けたものも当時の様子をよみがえらせている。船のカジを操る丸い舵輪(だりん)だ。
▼神戸で解体された船から松下氏が見つけて買い取ってきた。「会社を船にたとえるなら、本店は指令室にあたる。ここで会社のかじ取りをしていくのだ」。そう考えて、新社屋の上に掲げるようにして据え付けた。そのとき松下氏は38歳。もっと会社を成長させるんだという決意を、壮年の経営者は舵輪に込めたのだろう。
▼門真への進出は、企業の倒産が相次いだ昭和恐慌の記憶がさめやらぬなかでだった。7万平方メートルもの広大な土地を買収し、いくつも工場を建てるという計画は、ほかの企業から無鉄砲な経営ともいわれた。しかし、「経営の神様」にすれば、リスクがあっても創意と工夫で乗り越えるのが経営だと、思っていたに違いない。
▼くすぶる中国の金融不安や不透明な新興国経済……。いまの経営者も世界経済の先行きが見通しにくいなか、会社をかじ取りする力量が問われている。門真に移転した年に松下氏が始めたのが、製品分野ごとに採算をはっきりさせ、利益への意識を高める事業部制だった。困難に立ち向かうときこそ知恵も出てくるようだ。

大阪府門真市にはパナソニックの本社や工場とともに、同社の歩みを紹介する松下幸之助歴史館がある。1933年、大阪市内から門 :日本経済新聞 より

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