2015年1月1日木曜日

2015-01-01

戦後から70年を経た元日は、戦時中の過ちや繁栄を手にした記憶をなお胸に刻むのだ。

2015/1/1付

 「運命の年明く。日本の存亡この一年にかかる」。70年前の元日、のちに人気作家となる医学生の山田風太郎は日記にこう書いた。「祈るらく、祖国のために生き、祖国のために死なんのみ」。敗北の予感は市井に漂い、悲壮な決意を強いて運命の昭和20年は始まった。

▼戦局の険しさは誰の目にも明白だった。大みそかの深夜から、東京の浅草方面はB29に襲われているから正月どころではない。前線の戦いは一段とすさまじく、ルソン島では年明け早々に米軍の猛攻を受ける。しかも補給を断たれた「自活自戦」だ。戦争とは、あの戦争とはそういうものであったと歴史をかえりみて知る。

▼戦後の節目の、新しい年を迎えた。世界には痛苦が満ちているが、わたしたちの国はまずまず平穏、帰省してふるさとの山河に心を癒やされている方も多かろう。これだけの長い歳月、一度も戦争を経ずにやってきたのは本当に貴重なことだ。そのありがたさを思い、過去の栄光も悲惨も、成功も失敗も素直に見つめたい。

▼過ぎ去った日々はしばしば美しい。たしかにあの戦争の時代に、人々は生と死にひた向きに対峙した。しかしまた、無理無策を重ねてたくさんの過ちを犯し、アジアを苛(さいな)んだ現実もあった。「運命の年」から70年。運命を乗りこえて今日の繁栄を手にした日本である。そして明日をひらくために、記憶をなお胸に刻むのだ。
「運命の年明く。日本の存亡この一年にかかる」。70年前の元日、のちに人気作家となる医学生の山田風太郎は日記にこう書いた。  :日本経済新聞











[因]
戦後から70年の元日

[果]
明日をひらくために、記憶をなお胸に刻むのだ

<編集過程>
戦後から70年間一度も戦争を経験しなかった元日は、明日をひらくために、記憶をなお胸に刻むのだ
戦後から70年を経た元日は、戦時中の過ちや繁栄を手にした記憶をなお胸に刻むのだ。

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