2014年11月20日木曜日

2014-11-20

消費税税率引き上げ延期で、目前の政治態勢再建を急ぐあまり、後の利を失った。

2014/11/20付

 昔、宋の国に多くの猿を養っている人がいた。急に貧しくなり、餌のドングリを減らすことにした。朝三、夕四でと猿に言うと立ち上がって怒る。では、朝四、夕三ならどうかと聞くと、みな伏して喜んだ。目先の違いにとらわれるのを笑う「朝三暮四(ちょうさんぼし)」の故事である。

▼数は同じだから、満足も同じ。人間は一日を通して考えるし、先々も想定する。だから、猿と違って、ごまかされない。利益が得られるように計算して、合理的に行動する。将来に備えてお金をため、生涯の収入を考えながら使う。目先の収入の増減には、強い影響は受けない。かつて経済学はそんな人物像を描いていた。

▼現実は違う。先を見越していたはずが、ローン破産や借金苦に陥る人もいる。最新の経済学は、実験でその行動を確かめ始めている。せっかちな人は、来月の1万円より明日の5千円を選ぶ。足元の小利に目を奪われ、後の大利を失う。後悔先に立たず。不利なことは後回しにしがち。そうした感情も経済を動かしている。

▼消費税の税率引き上げ延期が決まった。景気回復が遅れ、デフレ脱却が危ういからという。アベノミクスが順調なら事情は違った。成長と財政再建、社会保障の充実を同時に追うのは難しい。それより目前の政治態勢の再建を急ぎたい。そんな心理が働いたとすれば、後に得られるはずの大きな利を失ったのかもしれない。
昔、宋の国に多くの猿を養っている人がいた。急に貧しくなり、餌のドングリを減らすことにした。朝三、夕四でと猿に言うと立ち上  :日本経済新聞











[因]
消費税の税率引き上げ延期が決まった。

[果]
目前の政治態勢の再建を急ぎ後に得られるはずの大きな利を失ったのかもしれない。

<編集過程>
消費税の税率引き上げ延期で、目前の政治態勢の再建を急ぎ後の大きな利を失ったのかもしれない。
消費税の税率引き上げ延期で、目前の政治態勢の再建を急ぐあまり後の大きな利を失った。
消費税税率引き上げ延期で、目前の政治態勢再建を急ぐあまり後の大きな利を失った。
消費税税率引き上げ延期で、目前の政治態勢再建を急ぐあまり、後の利を失った。

0 件のコメント:

コメントを投稿