2014年11月21日金曜日

2014-11-21

有権者に何を問うのか目的が曖昧な唐突な衆院解散に、国民は驚いてばかりもいられない。

2014/11/21付

 中島みゆきさんに「紫の桜」という曲がある。南半球の大陸や南洋の島で咲くジャカランダの樹に、大切な思いを託する心情を歌い上げる。~忘れてしまえることは忘れてしまえ。忘れきれないものばかり、桜のもとに横たわれ。抱きしめて眠らせて、彼岸へ帰せ……。

▼安倍晋三首相が外遊の最後に訪れた豪州のブリスベンは、その紫色であふれていた。日本人と桜に似て、この国ではジャカランダが新しい季節の到来を告げる。学期末の試験が始まり、その後に太陽の夏と年末休暇がやって来る。豪州で沈黙を守った首相も、胸中では変化の嵐を起こすボタンに指をかけていたに違いない。

▼きょう首相が衆院を解散する。政治家は慌ただしく全国に散り、地元の一票を懇願して街頭で叫び始める。けれども演説で、いったい何を訴えるのだろう。何を有権者に問う戦いなのだろう。吹き荒れる旋風のその先に、たしかに実を結ぶ政策が待っているのか。国民の幸せを願う真心が、政治の側からは伝わってこない。

▼時をリセットするように咲き誇るジャカランダの大木を撮った。迫力のない一枚になってしまった。淡い紫色が青空に溶け、焦点がぼけているのだ。歌はこう続く。~別れを告げて消えてゆくものはない。思いがけないことばかり。残されることが生きること――。思いがけない選挙に、国民は驚いてばかりもいられない。
中島みゆきさんに「紫の桜」という曲がある。南半球の大陸や南洋の島で咲くジャカランダの樹に、大切な思いを託する心情を歌い上  :日本経済新聞











[因]
衆院解散

[果]
思いがけない選挙に、国民は驚いてばかりもいられない。

<編集過程>
有権者に何を問うのか目的が曖昧な衆院解散による思いがけない選挙に、国民は驚いてばかりもいられない。
有権者に何を問うのか目的が曖昧な唐突な衆院解散に、国民は驚いてばかりもいられない。

0 件のコメント:

コメントを投稿