大丈夫という言葉が、若者の優しさ、自信のなさに染まり随分変わってしまったなあ。
2014/2/11付 「金銭の誘惑に負けたり、権威に屈したりしない、志の高い男子」。ユニークな注釈で知られる新明解国語辞典は、「大丈夫」をこう説いている。これがもとの漢語の意味に近いのだが、読みは「ダイジョウフ」。日本に伝わってから二通りに読むようになったらしい。 ▼もちろん「ダイジョウブ」の方は「彼に任せておけば大丈夫」のように使われる。しかし、昨今の若者が口にする大丈夫は「新明解」にもない。先日は仙台の飲食店で、店員と客が「領収書は?」「あっ、大丈夫です」と言葉を交わしていた。これで英語の「ノーサンキュー」だとみなに分かるのが、思えば不思議である。 ▼推測するに、席を譲られかかったお年寄りが「大丈夫、立っていられますから」と言うふうに、かつては必ず理由がついていたのだろう。その理由がどこかに消えて、何にでも使える婉(えん)曲(きょく)の拒絶だけ残ったのだ。「なら『結構です』があるじゃない」と声をかけても、「あっ、大丈夫です」と返されてしまうかもしれない。 ▼作家の池澤夏樹さんによれば、20世紀の米国の法律家が「言葉というのはカメレオンで、環境に合わせて色を変える」と言ったそうだ。日本語も、断定を嫌う若者の優しさだか自信のなさだかに染まり、どんどん変わっていく。それにしても「志の高い男子」から「ノーサンキュー」へ。同じカメレオンには到底見えない。「金銭の誘惑に負けたり、権威に屈したりしない、志の高い男子」。ユニークな注釈で知られる新明解国語辞典は、「大丈夫」をこう :日本経済新聞
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