2014年2月28日金曜日

2014-02-28

通貨は信用による交換の手段であり、ビットコインはシブヤの軽さを象徴しているようだ。

2014/2/28付

 金銀、宝石を所狭しと積み上げた店が、迷路のような路地の奥底にある。少し偉そうな顔つきの店主。民俗衣装に全身を包んだ女性客の群れ。その袖口に、金の腕輪がジャラジャラと何重にも光っている……。中東やインドの街にある市場で、よく出くわす光景である。

▼貴金属を肌身離さず持ち歩くのは、何か異変が起きた時に貨幣として使えるという古来の価値観の名残だという。戦争や政変があれば、紙幣は紙くずになるかもしれない。銀行に預けても、銀行そのものが消えるかもしれない。砂漠の民に限らず、国家と中央銀行より金銀や宝石の信用が勝る途上国、新興国は少なくない。

▼金の腕輪も仮想通貨のビットコインも、法的な通貨ではない。ネット空間を行き交う情報データか、身につけられる現物か。その違いはあるが、手軽な交換の手段である点は同じだ。リスクを承知で根強い人気があるのは、ドルや円などの公的な通貨や銀行サービスに、何らかの不満や不安を抱く人が多いからに違いない。

▼ユーロ誕生の際、ドイツはフランクフルトに中央銀行を置くことにこだわった。インフレと戦う独連銀(ブンデスバンク)の伝統と威信が染み込んだ土地である。仮想通貨の取引拠点がアキバと並ぶ日本のポップ文化の名所シブヤだったのは、象徴
金銀、宝石を所狭しと積み上げた店が、迷路のような路地の奥底にある。少し偉そうな顔つきの店主。民俗衣装に全身を包んだ女性客  :日本経済新聞

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