2014年2月24日月曜日

2014-02-24

五輪に向けての準備に拍車がかかるが不可避の事由で中止になる可能性も知っておきたい。

2014/2/24付

 今年映画化された中島京子氏の直木賞受賞作「小さいおうち」は、戦前の中流家庭を描く。作中で玩具会社に勤める男性が、ベルリンで開催中の五輪の報道に興奮しながら、こう語る場面が登場する。「これが、東京であってみたまえ、どれだけ玩具が売れることか!」

▼昭和11年夏、ベルリン五輪開幕の直前に4年後の東京開催が決まった。これで日本人だけでなく、外国人にも五輪をテーマにした玩具が売れると踏んだわけだ。実際に外国人の財布は期待を集めた。橋爪紳也氏の著書「あったかもしれない日本」が、雑誌「商店界」の付録「オリムピック新商売集」の内容を紹介している。

▼この冊子は商人に、英語を学び、値札は算用数字で書けと説く。「金儲(もう)け新プラン集」というページでは、絵はがきは「芸術的」なものより「ケバケバしい」ものが好まれると解説。内装に加え服や食器まで昔の日本を再現した飲食店はどうか、との提案も。「商売人たるもの大いに腕によりをかけなくては」と勇ましい。

▼ソチ五輪も終わり、東京の出番が「次の次の次」に迫った。競技場を建て、サービスに知恵を絞るなど準備に拍車がかかる。昭和11年の日本人も国際交流やビジネスの好機に胸躍らせたが、2年後に戦争などで開催を中止。10年もたたず多くの街が焼け野原になった。そんな「あったはずの五輪」も時には思い起こしたい。
今年映画化された中島京子氏の直木賞受賞作「小さいおうち」は、戦前の中流家庭を描く。作中で玩具会社に勤める男性が、ベルリン  :日本経済新聞

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