2014年2月18日火曜日

2014-02-18

イタリアに改革を訴える若い首相が生まれ政治をめぐる議論の声は一段と高くなるだろう。

2014/2/18付

 「北からおりてくる列車は花の匂いがするが、北へのぼっていく列車は汗の匂いがする」と書いたのは開高健である(「夏の闇」)。ヨーロッパを南北に行き交う人の流れをスパッと描写して無駄がない。欧州連合(EU)が抱えてきた南北問題まで垣間見る気がする。

▼北の代表がドイツなら南の大国はイタリアだろう。メルケル首相が9年目に入ったドイツと毎年のように首相が代わるイタリアは、それだけで対照的なのだが、そのイタリアに39歳の首相が生まれるという。「旧世代をスクラップする!」と改革を訴えるマッテオ・レンツィ氏。「壊し屋」と称される新世代の旗頭である。

▼そういえばおととしは経済学者が首相を務めていた、くらいは覚えていても、イタリア政界の生々流転についていくのは容易ではない。唯一、良くも悪くもこの人、というベルルスコーニ元首相は昨年11月に脱税で国会から追放された。レンツィ氏の年齢はちょうど半分、国民は待望久しい若きカリスマを見いだしたのか。

▼一服したといえ、イタリアはまだ「欧州リスクの震源」だと「北」の目には映る。行く末は彼ら自身にだって分からない。それでも新しいスターである。開高健は北へのぼる列車の光景を「人びとは声高くしゃべったり、叫んだりし……」と描いた。車内に限らぬ。政治をめぐる議論の声音は一段と高くなっているだろう。
「北からおりてくる列車は花の匂いがするが、北へのぼっていく列車は汗の匂いがする」と書いたのは開高健である(「夏の闇」)。  :日本経済新聞

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