2014年2月17日月曜日

2014-02-17

災害時は他人も同士となり自分一人の力で生きているわけではないと思いだしておきたい。

2014/2/17付
 雪に慣れない首都圏はたった一日の吹雪で大混乱になる。先週末は高速道路が止まり、ダイヤが乱れた鉄道で衝突事故まで起きた。悪いニュースばかり目立つが、都会の大雪には良い点が一つある。困っているはずなのに街で会う人々が明るく生き生きとした顔になる。

▼歩行者が滑らないよう店先で雪かきに精を出す店員さんに、ありがとうの一言が素直に出てくる。駅の掲示板を見上げる赤の他人が、同じ困難と闘う「同志」になる。靴の中までぬれて冷たくて苦痛でも、すれ違う際に目が合うと、ふと笑みが漏れる。誰をも等しく襲う悪環境に遭遇すると、人は他者に優しくなるらしい。

▼3.11の時もそうだった。子供と老人が被災地で助け合い、支援者が日本全国から駆けつけた。災害時に起きやすい不正行為は、ほとんどなかった。他人の苦しみを自分の事として考える。外国から「秩序正しい日本人」と褒められたが、当事者にとってはごく自然な行動だったに違いない。あれからもうすぐ3年になる。

▼あたりの景色が雪で白く変わると、薄れかけていた大切な記憶が、色鮮やかによみがえることがある。天災は誰かのせいで起きるのではない。誰も悪くないから人は力を合わせて頑張るしかない。溶けきれぬ雪はビショビショで厄介だが、消える前に思い出しておきたい。自分が一人の力で生きているわけではないことを。
雪に慣れない首都圏はたった一日の吹雪で大混乱になる。先週末は高速道路が止まり、ダイヤが乱れた鉄道で衝突事故まで起きた。悪  :日本経済新聞

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