2014年2月22日土曜日

2014-02-22

浅田選手があきらめず挑戦し遂げた大健闘は、結果ばかり案ずる大人達を深く恥入らせる。

2014/2/22付

 べらんめえ調の江戸っ子なら「利いたふうな口をききゃあがって」とねじ込むところだろう。森喜朗元首相が、フィギュアスケートの浅田真央選手を評した言葉のことである。「真央ちゃん、見事にひっくり返りました。あの子、大事なときにはかならず転ぶんですね」

▼ショートプログラムで失敗を重ね、まさかの16位。翌日のフリーでどんなに頑張ってもさほど挽回はできそうもない――と残念無念の思いで口にしたに違いない。浅田選手への同情から出た発言なのだろうが、この人は2020年東京五輪組織委員会の会長である。いまに始まった話ではないけれど、どうにも軽いご仁だ。

▼そんな森さんを尻目にかけるように、浅田選手は失意の底から1日で立ち直って最高の演技を見せた。リンクに流れるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。おごそかな調べに乗ってトリプルアクセルを決め、それから先は華麗なジャンプ、ジャンプ、ジャンプである。深夜のテレビの前で涙ぐんだ方もたくさんおられよう。

▼メダルには届かなかったが、それはたいした問題ではない。あきらめない心、可能性に挑む勇気の大切さを、この大健闘は教えてくれたのだ。もうどんなに頑張ったって、どうせ、どうせ……。森さんではないが、世間を眺めて、つい利いたふうな口をききそうになるオトナたちを「あの子」は深く恥じ入らせるのである。
べらんめえ調の江戸っ子なら「利いたふうな口をききゃあがって」とねじ込むところだろう。森喜朗元首相が、フィギュアスケートの  :日本経済新聞

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