2014年5月17日土曜日

2014-05-17

地方が衰退しないよう人口流出を止める行動を起こさなければ、消える町が増え始める。

2014/5/17付

 町が突然、消滅した。一体、何が起きたのか。理由は分からない。爆音も振動もなく住民数万人が消えた。人がいた痕跡も残っていない。立ち入りは柵で制限された。沈黙が支配する街路には草木が生い茂る。荒涼とした風景の中で放置された家並みが朽ち果てていく。

▼初めから町はなかった。そう見なさないと怪現象は伝染するらしい。政府は町の名を抹消し思い出に浸ることを禁じる。語ってもいけない。次の消滅を防ぐために、住民の記録、写真などを運び去る。それでも地図の空白は広がっていく。むろん現実の話ではない。小説(三崎亜記「失われた町」)が描いた寒々しい光景だ。

▼空想とばかり笑ってはいられない。先に、民間の「日本創成会議」が公表した推計は衝撃的だった。約30年後には日本の市区町村の半数、約900自治体が消える恐れがあるそうだ。子どもを産む女性が減り、人口が減少。地方から大都市への人口流出が進んで福祉、教育などの役目を維持できない自治体が増えるという。

▼自治体の数は「平成の大合併」で3千超から約1800に減ったものの、1千という国の目標には遠かった。推計通りなら労せずして目標に届く。行政の効率化、質向上につながればいいが、地方衰退の結果では本末転倒だろう。人口流出を止める即効薬はないが、とにかく行動を起こさなければ、消える町が増え始める。
町が突然、消滅した。一体、何が起きたのか。理由は分からない。爆音も振動もなく住民数万人が消えた。人がいた痕跡も残っていな  :日本経済新聞











[因]
行動を起こさなければ

[果]
消える町が増え始める。

<編集過程>
行動を起こさなければ、消える町が増え始める。
地方が衰退しないよう人口流出を止める行動を起こさなければ、消える町が増え始める。

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