外税表示による支払い時の心理負担を解消し、消費を盛り上げる政策は企業の知恵か。
2014/9/25付
「一つ六銭だよ」。屋台のすし屋のあるじに言われて、仙吉はつまみかけた鮪(まぐろ)のにぎりを元に戻す。ふところには4銭きり。多分これで足りると思ったのが計算違い、少年は逃げるように店を後にするのだった――。志賀直哉の名作「小僧の神様」の有名な場面である。
▼大正時代の小僧さんのような気分を、買い物のさいに味わっている人も少なくあるまい。この春の消費税アップにともない外税表示が認められるようになったため、ときとして会計の段になって往生するのだ。1980円か、こりゃあ値ごろだな……と千円札を2枚出してお釣りを待っていたら「138円足りませんっ」。
▼「外税を知らずにレジで天仰ぐ」「値札見て『込み』か『抜き』かと目をこらす」。神戸元町商店街が先月、消費税をテーマに募集した川柳にもこんな作品が並んだ。レジでいきなり8%を加算されたときの負担感はなかなかのもので、増税をいやでも意識するはめになる。ここにきての消費伸び悩みの一因かもしれない。
▼わずかな差でも「イチキュッパ」に引かれるのが人の世だ。なのにつれない外税表示だが、再増税のあかつきには内税表示に戻ると言われても「10%」が頭に浮かんでこれまた心乱れよう。かの小僧はやがて鮨(すし)をたらふく食べさせてくれる紳士に出会う。消費を盛り上げるそういう「神様」はどんな政策か、企業の知恵か。
「一つ六銭だよ」。屋台のすし屋のあるじに言われて、仙吉はつまみかけた鮪(まぐろ)のにぎりを元に戻す。ふところには4銭きり :日本経済新聞
[因]
外税表示による支払い時の消費者心理負担による消費伸び悩み
[果]
消費を盛り上げる政策は企業の知恵か
<編集過程>
外税表示による支払い時の消費者心理負担による消費伸び悩み、消費を盛り上げる政策は企業の知恵か
外税表示による支払い時の心理負担を解消し、消費を盛り上げる政策は企業の知恵か。
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