2014年3月1日土曜日

2014-03-01

法王はかつてのイエズス会と同じように透明性の高い内側からの制度改革に踏み切った。

2014/3/1付

 ローマ法王フランシスコは先ごろ、母国アルゼンチンの旅券と身分証を更新した。特別扱いを望まず、普通の国民と同じような手続きで、規定の更新料も支払ったそうだ。旅券には本名が記された。質素な生活と気さくな人柄で知られる法王らしい、と報じられている。

▼初代とされるペテロから数えて266代、初のアメリカ大陸出身者だ。日本史上にも深い足跡を残している修道会、イエズス会の一員としても、初めて。元駐バチカン大使の上野景文・杏林大学客員教授によれば、昨年3月の就任から信者の「バチカン詣で」は3倍近くに増えたという。清新な息吹を感じているのだろう。

▼法王自身、カトリック教会の改革を目指す構えを鮮明にしている。離婚や同性婚、避妊、中絶といった問題に対する姿勢を改める、と述べたことがある。最近も、お金にからむ噂の絶えない法王庁の透明性を高めるための制度改革に踏み切った。「王朝風のバチカン文化」とは対極にある人物。そう上野さんは書いている。

▼フランシスコのちょうど500年前、1513年3月に就任したレオ10世を思い浮かべる。「王朝風のバチカン文化」を体現したような法王で、財源として免罪符を大々的に売り出し、結果的にルターの宗教改革を招いた。そしてルターとは逆に内側からの改革を目指したのが、イエズス会だった。歴史の綾(あや)というべきか。
ローマ法王フランシスコは先ごろ、母国アルゼンチンの旅券と身分証を更新した。特別扱いを望まず、普通の国民と同じような手続き  :日本経済新聞

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