2014年10月26日日曜日

2014-10-26

正岡子規の心を捉えた秋の果物柿も、現代人には手間がかかると敬遠されがちだ。

2014/10/26付

 朝食に雑炊3杯、牛乳1合ココア入り、菓子パン2個をたいらげ、昼はカツオの刺し身、粥(かゆ)3杯に梨、ぶどう酒も。間食として団子を4本、塩せんべい、夕食はまた粥を3杯、なまり節、キャベツ……。明治34年秋の、病床での俳人正岡子規の食事だ。死の前年である。

▼当時の日記「仰臥(ぎょうが)漫録(まんろく)」には、連日こうした凄絶な「食」がつづられている。10月に入ると果物はたびたび柿で、1度に2個、3個。「かぶりつく熟柿や髯を汚しけり」の句が見える。大好物だったようで、じつは明治28年10月26日からの奈良旅行で詠んだといわれるのが、有名な「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」である。

▼句の誕生にちなんで、きょうは「柿の日」だという。世にナントカの日は多いけれど、この時期のこの果実はまさにたける秋の風情そのものだからうなずける。中国原産なのに、じつに日本的な面持ちを感じるのは栽培の歴史が古いからか。かつて谷内六郎が描いた晩秋の山里には、しばしば枝に残る黄赤色の実があった。

▼「柿くふも今年ばかりと思ひけり」。子規は死を予期してこんな句を残し、明治35年9月19日、柿の季節にはわずかに間に合わず短い生涯を閉じた。波乱の時代を駆け抜け、食べることにも最期まで懸命であった人だ。その心をとらえた秋の味も、平成の現代では皮をむくのがメンドクサイ、などと敬遠されがちだという。
朝食に雑炊3杯、牛乳1合ココア入り、菓子パン2個をたいらげ、昼はカツオの刺し身、粥(かゆ)3杯に梨、ぶどう酒も。間食とし  :日本経済新聞











[因]
正岡子規の心を捉えた秋の味も

[果]
現代人には理解されにくい。

<編集過程>
正岡子規の心を捉えた秋の味も、現代人には敬遠されがちだ。
正岡子規の心を捉えた秋の果物柿も、現代人には手間がかかると敬遠されがちだ。

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