2014年4月20日日曜日

2014-04-20

人や社会の素顔を描く文学の豊かさは、一歩間違えれば誰かを傷つけるから難しいなあ。

2014/4/20付

 若い教師が地方都市の旧制中学に赴任した。ところが生徒からは嫌がらせを受け、教師の多くは事なかれ主義だったりゴマすりだったり。あれこれトラブルが続き、短期間で辞職、東京の実家に戻ることを余儀なくされた。こう聞くと、どんなひどい町や学校かと思う。

▼お分かりだろうが作品は夏目漱石の「坊っちゃん」、舞台は漱石が実際に教師を務めた愛媛県の松山市とされる。いま松山では、この作品の名を掲げた文学賞を設けるなど町おこしに大いに利用している。ただし10年ほど前のアンケートでは、地元が悪く描かれており不快だという人も少なからずいた。率直な感想だろう。

▼村上春樹さんがおととい発売の短編集で、2作品について申し入れを受け雑誌発表時から内容を書き換えたと説明している。1つはある北海道の町ではタバコのポイ捨てを「みんなが普通にやっている」のだろうと主人公が思う場面で、架空の町に変更。もう1つはビートルズの歌の関西弁での替え歌。ぐっと縮めている。

▼村上さんは関西出身で北海道とビートルズに愛着を持っているのも有名な話だが、当事者や関係者は許せなかった、ということだ。ヒット曲「襟裳岬」の何もない春、という詞に地元が怒った例もある。揶揄(やゆ)や反語も駆使しつつ人や社会の素顔を描くのが文学の豊かさだが、一歩間違えれば誰かを傷つける。難しいものだ。
若い教師が地方都市の旧制中学に赴任した。ところが生徒からは嫌がらせを受け、教師の多くは事なかれ主義だったりゴマすりだった  :日本経済新聞











[因]
人や社会の素顔を描く文学の豊かさは

[果]
一歩間違えれば誰かを傷つけ難しいものだ。

<編集過程>
人や社会の素顔を描く文学の豊かさは、一歩間違えれば誰かを傷つける難しいものだ。


0 件のコメント:

コメントを投稿