2014年3月5日水曜日

2014-03-05

冷戦と似て非なる露のウクライナ軍事介入を、優れた文筆家チャーチルならどう形容するか。

2014/3/5付

 ドイツが降伏して間もない1945年6月。英国の首相チャーチルは下院を解散した。ご本人は挙国一致内閣を日本の敗北まで維持すべきだと考えていたようだ。が、最大野党の労働党だけでなく、与党の保守党内からも吹きつけた解散風に、抗しきれなかったらしい。

▼翌月の投票の結果は労働党の圧勝。保守党は下野した。これに先立ってチャーチルは米国と英国、ソ連の3首脳の会合を開こうと呼びかけていた。その結果が米国のトルーマン大統領、ソ連のスターリン共産党書記長とのポツダム会談だったのだけれど、発起人というべきチャーチルは会談の途中で交代を余儀なくされた。

▼それでも政治への情熱は衰えなかった。保守党党首として反共の訴えを強め、46年には訪問先の米国で歴史に残る演説をした。「バルトのシュチェチンからアドリアのトリエステまで、ヨーロッパ大陸を横切る鉄のカーテンが引かれた」。68年前のきょうのことだ。そして「鉄のカーテン」は冷戦を象徴する言葉となった。

▼新たな冷戦か――。ロシアがウクライナに軍事介入して以来、欧米メディアではこんな言葉が飛び交う。かつてのような資本主義と社会主義の対立があるわけではない。けれど、冷戦と共通する何かを感じるのだろう。優れた文筆家でノーベル文学賞も受賞したチャーチルなら、今の世界をどう形容するか。聞いてみたい。
ドイツが降伏して間もない1945年6月。英国の首相チャーチルは下院を解散した。ご本人は挙国一致内閣を日本の敗北まで維持す  :日本経済新聞

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