2014年3月9日日曜日

2014-03-09

松林を育てる人達の頑張りによりきっと松林は蘇りやがて散歩する人を楽しませるだろう。

2014/3/9付

 春、浜辺をそぞろ歩くと、まだ背の低い松に新しい芽が伸び始めている。そのみずみずしさを詠んだ句「浜道や砂から松の若みどり」(蝶夢)のような景色が、何年か先、きっとよみがえる。松林をもう一度つくろうという人たちの頑張りに、そんな確信がわいてくる。

▼津波でほとんど失われてしまった海岸林の再生は、息の長い仕事だ。宮城県名取市では、地元の「再生の会」に非政府組織(NGO)が協力して、クロマツの種をまいて苗をつくることから始めた。2年たった苗は25センチ以上に育ち、春の植え替えを待っている。その繰り返しで、これから6年間に50万本を植林するという。

▼植林、植樹には誰もが手軽に参加できる緑化イベントのイメージがある。そんなものではないとも教えられた。海岸の松林は潮風や砂、霧から生活を守ってきた。その分自らは厳しさのなかに身をさらしている。栄養分のない土壌と寒風に乾風、二つの「カンプウ」に痛めつけられ、「砂漠の植林より難しい」のだそうだ。

▼だから専門家が植える。それでも3割ほどは間もなく枯れてしまうという。3年前に流された松林は伊達政宗が命じて造成させた。400年前の話である。老松が若松に代わり、やがては散歩する人を楽しませるだろう。そして一人前の松林になるまで50年、60年。その姿を、いま頑張っている人の多くは見ることがない。
春、浜辺をそぞろ歩くと、まだ背の低い松に新しい芽が伸び始めている。そのみずみずしさを詠んだ句「浜道や砂から松の若みどり」  :日本経済新聞

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